「フリー」ビジネスモデルの発展

 

変化の速い時代において、数年前のビジネス書が無価値になっていることは多い。

しかし、8年前(2009年)の本になるにもかかわらず、ワイアード誌の編集長であるクリスアンダーソン氏が執筆した『フリー』という本は今の時代に通じる内容であり、損には全くならない。

それどころか、現代の「フリー」というビジネスモデルを包括的に理解するためには、必読ともいえる。

 

フリーのビジネスモデルの中で注目されており、本でも述べられているのは、「広告」によるフリーや「少数課金」によるフリーだ。 ともに大きな規模を前提としてフリー」ビジネスモデルの発展、ほんの一部のユーザーが広告をクリックしたり、課金したりすることにより収益があがる仕組みだ。 これらの「フリー」モデルによって発展したサービスは、FacebookやNewsPicksや数々のゲームなど数えきれない。

 

そして、さらに興味深いのは新たな『フリー』モデルが誕生していることだ。 それは、「コンテンツ開放型」といえるフリーのモデルである。 これは、絵本も含む書籍に見られるモデルで、キングコングの西野さんや、Showroomの前田さんが「コンテンツ開放型」の先駆者といえると思う。

「コンテンツ開放型」とはコンテンツを売るにも関わらず、そのコンテンツを無料(フリー)にしてしまうビジネスモデルだ。 絵本であれば、絵そのものを、ビジネス書であれば、文章そのものを無料で開放するのだ。

「なぜ利益が出るのか分からない」という人も多いかもしれないが、コンテンツを無料で知ったにもかかわらず、そのコンテンツを有料で買う人が多い。

なぜなのか。

ふと考えてみると、我々は中身を知らない物を買わない。むしろ中身についてほとんど知っているものにお金を払う。

 

例えば、絵。

有名な絵を見に行くために、多くの人は美術館に行く。絵自体は見たことあるにも関わらず。

例えば、ライブ。

知っている曲を聴くために、ライブに行く。曲自体は知っているにも関わらず、我々は聞きに行く。いやむしろ、知らない曲はつまらない。

 

本や絵本も同様である。 ある程度、中身をしった上で私たちは購入しているはずだ。 だから無料公開しても買われるのだ。 半沢直樹シリーズだって、ストーリーの流れは知った上で、購入しているはずだ。 この「コンテンツ開放型」の発展は実に興味深い。 音楽業界では曲自体は限りなく安くなり、ライブで稼ぐようになっている。 飲食や教育でもコンテンツ開放型が導入されるのではないかと期待している。